今日の社説

2017/11/23 01:18

石垣復元に3D 先端の「技」で再生を後押し

 復元作業が進む金沢城鼠多門(ねずみたもん)の石垣を修復するため、石川県は、3Dプリンターで石材の模型を造り、位置の特定に生かす手法を考案した。鼠多門が史実に近い姿になれば、金沢城の文化財としての価値は一段と高まる。先端技術を駆使して伝統の職人技を補強する「未来志向」の取り組みを、これからの文化財復元のモデルケースにしたい。

 金沢城の復元事業も第3期のステージに入り、鼠多門はその目玉として2021年度までの完成をめざしている。15年度から始まった発掘調査では、玉泉院丸から鼠多門に至る通路で、両側の壁から切(きり)石(いし)積(づみ)の石垣の一部が見つかり、多数の石材を確認した。

 金沢城調査研究所は、レーザー測量で石材を計測したデータを基に、3Dプリンターで10センチ四方の樹脂製の模型を作った。軽量なため、パズルのように組み合わせることが容易で、順次、石材の元の位置の特定を進めている。今後もこの手法で作業を進め、年内に設計図をまとめるという。

 全国の城壁などでは切石積の技法を用いた石垣が多く、今回編み出された技術は、復元作業をサポートする手法として、広範囲に生かせるとの期待も大きい。

 文化財の復元や再現に3D技術を生かした例としては、最近では高岡銅器や井波彫刻の技法に3Dプリンターなどの技術を組み合わせて再現された法隆寺の国宝「釈迦三尊像」が挙げられる。

 また過激派組織「イスラム国」に破壊されたシリア中部の世界遺産・パルミラ遺跡の「凱旋門」が3Dプリンターの技術を応用して複製され、昨年、ロンドンのトラファルガー広場で展示されたように、先端技術によって文化財の情報を微細な部分まで記録し、再現することも可能になった。

 文化財の復元では、伝統技術の職人がさまざまな部門を担当することが技の継承につながる。一方で、新たな技術を導入することで作業の省力化と正確性が格段に向上することも事実であろう。未来の文化財保護の方向性を探る上でも、金沢城の復元を進める中で、先端技術を組み込んだ試みを意欲的に取り入れていきたい。

「森友」値引き問題 待たれる特捜部の判断

 学校法人「森友学園」が購入した国有地の値引き問題で、会計検査院は、国の見積もったごみ処分量は過大であり、ごみ撤去費用として約8億円値引きした根拠は不十分との検査報告書を参院に提出した。ごみ処分量などの算定に当たり、慎重な検討を欠いていたという会計検査院の指摘は重く、政府は値引き額の妥当性などについて、あらためて説明を迫られている。

 会計検査院の検査目的は、税金の無駄遣いがないかどうかを調べることであり、明朗とはいえない国有地売買に至った理由や背景は定かではない。森友学園問題をめぐっては、地元の市議会議員や市民らが、国有地を売却した財務省近畿財務局や、ごみ撤去費用を算定した国土交通省大阪航空局の当時の担当者らを、背任容疑と証拠隠滅容疑で検察に告発している。告発を受理し、立件できるかどうか捜査している大阪地検特捜部の判断が待たれる。

 会計検査院の報告書によると、大阪航空局は過去に行った現場の地下埋設物調査などを参考に、売却地のごみ処分量を1万9520トンと見積もったが、会計検査院の試算では、実際の処分量はその3~7割だったとみられる。

 会計検査院が問題視しているのは、大阪航空局の見積もりの仕方である。同局がごみ処分量の算定に、試掘結果から得たごみ混入率のデータを用いたのは当然としても、データの使い方が適切ではないため、過大な見積もりになったと検査院はみる。

 例えば、試掘箇所でごみが出てきた所は6~7割で、残り3割余の箇所では見つからなかった。大阪航空局が見積もりに用いた47%というごみ混入率は、ごみが見つかった試掘箇所に限ってのデータであるが、これを用地全体に適用して計算したため、ごみ処分量と撤去費用が不当に膨らむ形になっているという。

 会計検査院は、ごみ撤去費用を2億~4億円程度と試算しているが、費用算定の根拠となる資料などは廃棄されてしまったという。公的な文書管理のずさんさも厳しく責められよう。