今日の社説

2017/09/26 01:13

28日冒頭解散へ 対北外交、消費増税が争点

 安倍晋三首相が会見で述べた解散の大義は、どこまで国民の胸に響いただろうか。北朝鮮対応と少子化問題を直面する最大の課題と位置付け、「この解散は国難突破解散だ」と強調した。特に北朝鮮問題については国民に信を問うべき理由として不足はない。ただ、なぜ今なのかという問いに十分答えられたかどうかは判断の分かれるところだろう。

 北朝鮮は核兵器と弾道ミサイルを振りかざし、日本を核兵器で「沈める」と脅している。軍事衝突すら懸念される局面で、首相はトランプ米大統領と共同歩調を取り、圧力重視の外交を進める考えをあらためて示した。外交・安全保障を争点とする限り、安倍首相の存在感は大きく、与党は有利に選挙を戦える。首相会見からは、そんな思惑も透けてみえる。

 それでも北朝鮮に強気一辺倒で臨めば火の粉を浴びる可能性も否定できない。野党は「対話のための対話は意味がない」と語る首相に同調するのか、それとも反論するのか。「対話を優先すべき」という声も聞こえてきそうだが、そうなると中国やロシアの主張とあまり変わらず、米国との関係悪化が気になってくる。

 また、首相は2019年10月に消費税を予定通り引き上げ、増収分のうち約2兆円を教育無償化や少子化対策など「人づくり革命」に充てると述べた。全世代型の社会保障制度というと聞こえは良いが、8%から10%への消費増税は景気に悪影響を及ぼし、デフレ脱却が遠のく恐れがある。使途変更以前に増税の是非が問われよう。

 安倍首相が質疑無しの冒頭解散を決めたことに野党は強く反発し、「国会軽視だ」「森友・加計疑惑隠しだ」などと批判している。一方で、政府は森友・加計疑惑について閉会中審査に応じており、これ以降、「首相の関与」が疑われる新たな材料は出ていないのも事実である。政府の説明に「納得できない」という声もくすぶるが、手詰まり感は否めない。

 首相は改憲については触れなかったが、民進党や共産党などは「安倍改憲に反対」で足並みをそろえている。改憲に前向きな新党を巻き込んで論議を深めてほしい。

「小池新党」旗揚げ 希望の「第三極」になるか

 東京都の小池百合子知事が、自ら代表となって国政新党「希望の党」を結成すると表明した。小池氏を中心とした新党の旗揚げは既定路線であったとはいえ、都知事のまま新党の先頭に立って国政に関与するとの宣言は、既成政党や大方の有権者にとって予想外といえ、驚きをもって受け止められている。

 自治体の首長が地域政党を立ち上げ、国政政党の代表に就いた例として、橋下徹氏が大阪府知事、大阪市長のまま維新の会の代表に就任したケースが挙げられるが、既存野党が星雲状態にある中、首都から新たに「第三極」政党をめざす動きが出てきたことは、より衝撃的である。

 政権交代可能な二大政党制の実現をめざす政治改革はなお途上にあり、日本政治が離合集散を繰り返すなか、「小池新党」は政権の受け皿になり得る政党に成長できるのか。「都民ファーストの会」に示された小池人気はなお続いており、10月衆院選の「台風の目」になるとみられるが、国政政党として広く国民の支持を得るためにはまず、政党の理念、理想を具体的政策で肉づけする必要がある。都知事として都政の課題を確実にこなし、都民の信頼を失わないことも肝要であろう。

 これまでの小池新党づくりは表向き、自民党を抜け出た側近の若狭勝衆院議員と民進党を離党した細野豪志元環境相が軸となって進められてきた。安倍晋三首相の衆院解散表明に先立って、日本のこころ代表の中山恭子参院議員らも合流を決め、与野党を一層刺激しているが、集合する政治家個々人の政治信条や理念はばらばらで、小池新党がどのような政党をめざすのか、かえって分かりにくくなった印象も否めない。

 民進党や共産党など野党4党にとって、小池新党は手強い競争相手となり、無党派票の獲得が困難さを増すのは必至である。与野党候補の対決図式を「1対1」にすることをめざして調整を進める方針というが、小池新党が候補者を擁立する選挙区が全国的に広がれば、野党各党の選挙戦略も変更を余儀なくされよう。