今日の社説

2017/02/25 00:45

金沢のライトアップ 夜のにぎわい創出に一役

 金沢市が中心市街地を広くライトアップする構想を掲げ、予算計上したのは「夜の観光」を一層魅力あるものにし、宿泊客を増やす狙いだろう。光の演出を点から線へ、さらに面と広げ、そぞろ歩きが楽しめるようになれば、活気が生まれる。

 特に兼六園や本多の森、金沢城公園、しいのき緑地、玉泉院丸庭園などで構成される「兼六園周辺文化の森」は日中、多くの人であふれる半面、夜はひっそりとして通りを歩く人影もまばらだ。市中心部に広大な緑地があり、多彩な文化施設が集積する「強み」が、夜にはむしろ「弱み」となってしまうのだろう。

 ライトアップは、近世から現代までの個性的な建物が混在する金沢の特徴を際立たせる手段として有効だ。既に夜間照明の設置が決まっている浅野川沿いも金沢の風情や情緒を味わえる場所であり、散歩コースに適している。うまく使えば夜のにぎわい創出に一役買うこともできるのではないか。

 重要なのは、観光戦略としてライトアップを考えるのではなく、金沢の新たな魅力を引き出す手法の一つとすることだ。昼間とは全く違う「夜の顔」を見せ、市民にあっと言わせるほどでなければ、にぎわいを生むのは難しい。

 金沢に限らず、全国の著名な観光施設の多くは、既にライトアップを行っており、それほど珍しいものではなくなった。地元の歴史的建造物などを単にスポットライトで浮かび上がらせるだけでは、車窓からの眺めで十分といわれてしまうだろう。

 そういわせないためには、光の演出を点で終わらせず、つなげていく発想が求められる。全体的に統一感を持たせ、芸術性、同調性を高める工夫もいる。近くから見るだけでなく、遠くにある建物を光で浮かび上がらせたり、時間差で照明の角度や色を変えるなどしたりして、飽きさせない演出ができないか。

 一昨年5月に金沢城公園で、城郭をスクリーンに見立てて行われた「プロジェクションマッピング」には多くの市民が集まった。この時のように、市民と観光客がともに斬新な光のショーを楽しむ光景を見てみたい。

北方領土にロ師団 経済、防衛交流に不信の種

 ロシアのショイグ国防相が、クリール諸島(北方領土と千島列島)に新たに1個師団を配置する方針を明らかにした。昨年末の日ロ首脳会談で合意した北方領土での共同経済活動の協議が3月から本格化する予定で、日ロ外務・防衛閣僚会議(2プラス2)も3月20日に東京で開催される。その矢先の軍備増強表明は、北方四島の主権で譲歩しない意思をあらためて示し、日本側をけん制する狙いがあるとみられるが、日本国民にとっては対ロ不信の新たな種としか映らない。

 日本側は3月の日ロ2プラス2で、海上自衛隊とロシア海軍の共同訓練を、従来の海難事故の捜索・救難訓練からテロ・海賊対策に拡大することをめざしている。日ロの防衛協力推進は、北方領土交渉や対中国戦略にも効果的とみられる。新たな師団配置先が北方領土であれば、日ロ間の信頼醸成に水を差すことになりかねず、稲田朋美防衛相は2プラス2で強く抗議しなければなるまい。

 防衛省によると、ロシアは現在、北方四島のうち国後島と択捉島に1個師団(機関銃・砲兵師団)を駐留させており、昨年は最新鋭の地対艦ミサイルも配備した。年内に新たに1個師団をクリール諸島に配置する方針は、軍事戦略として北方領土を重視するロシアの姿勢をあらためて浮かび上がらせている。

 16年版防衛白書によると、ロシアは極東の戦略核戦力として、核兵器搭載の弾道ミサイルを発射できる原子力潜水艦(SSBN)をオホーツク海に配備している。対米戦略上、オホーツク海のSSBNはロシアの安全保障の生命線ともいわれ、その防衛に不可欠の国後、択捉両島を手放すことは考えにくいとの見方が日本の防衛関係者らの間で出されている。

 安倍晋三首相がプーチン大統領との会談で「新たなアプローチ」に基づき、特別な制度の下での共同経済活動の交渉開始で合意したのは、そうした状況も考慮してのことと思われる。北方領土を重視するロシア国防相の師団追加方針は、今後の交渉の険しさを告げているともいえる。