今日の社説

2017/07/23 00:19

県の移住相談窓口 就職支援の効果は大きい

 石川県の移住相談窓口を通じた県内での就職と移住が増えている。ILAC(いしかわ就職・定住総合サポートセンター)によると、県内に移って就職した人は4~6月で42人となった。前年同期の19人と比べると倍以上に増え、家族を含めると68人が県内に移り住んだことになる。

 ILACの開設から2年目で、仲介した移住が前年の倍のペースで増えているのは、人口減少対策の成果として注目できる。

 県はILACを金沢と東京に設けている。従来の相談窓口と違うのは、石川の暮らしと求人の情報を集約し、移住と就職の相談に一括して対応できる体制を整えたことである。移住やUターンを考える人が心配するのは職だろう。ILACの実績を見ると、移住相談の窓口に就職支援の機能を加えた効果の大きさが分かる。

 人口減少を抑える即効薬はない。人口の転出超過を転入超過に転換することも簡単ではないが、若者の地元定着と移住の増加に地道に取り組めば成果は出てくるはずだ。ILACの実績は就職支援をてこにして移住者を増やす施策が的を射ていたことを物語る。

 総務省の人口動態調査によると、県内では2016年の間に813人の転出超過となった。一方、16年度にILACを通じて県内で就職した人は147人、移住者は243人である。今後、移住の増加基調を維持していけば、転出と転入の均衡は実現の可能性が見えてくるだろう。

 移住と就職支援の窓口を一体化する意味は人口対策にとどまらない。県内企業の人材確保策としても効果を期待できる。県は専門性を持つ人材を県外から雇用した企業に対し、人件費を助成する制度を設けた。こうした仕組みもうまく活用して、人手不足の対策につなげていきたい。

 今年は新卒の就職希望者が大都市の大手企業に向かう傾向が出ており、ILACには首都圏に進学した学生のUターン就職を支える役割が期待されている。後継者難に直面する農林業や漁業に携わる移住者を増やすことにも力を入れる必要がある。民間や市町の要望も吸い上げて、実績倍増のペースを続けてほしい。

原発処理水の扱い 口論でなく建設的協議を

 東京電力福島第1原発でたまり続ける汚染処理水の扱いをめぐって、東電幹部と原子力規制委員会の感情的な対立や行き違いが表面化している。処理水の具体的な処分方法について、海洋放出が現実的選択肢という認識で両者は基本的に一致しているはずである。口論ではなく、建設的な協議を通して国民の理解促進に努めてもらいたい。

 福島第1原発で発生する高濃度汚染水は、浄化設備で放射性物質を取り除いているが、トリチウムは除去できない。原発敷地内にはトリチウムを含む大量の処理水が保管されており、その量は7月初旬現在で約78万トン(タンク数で約580基)にも上る。

 トリチウムは自然界に存在し、通常の原発発電でも発生する。人体への影響は小さいとされ、基準値を下回れば海に流すことが国際条約で認められている。政府の検討会は昨年、トリチウム水の処分について、海洋放出や蒸発などの選択肢を示した上で、海洋放出がより短期間、低コストで処分できるとの報告書をまとめている。

 原子力規制委の田中俊一委員長も、希釈後の海洋放出を東電に促している。しかし、科学的に問題はないとされても、風評被害を恐れる漁業関係者らが海洋放出に強く反対しており、東電も政府も最終判断をできずにいる。

 東電の川村隆会長は先に「田中委員長と同じ意見だ」と言って、海洋放出の方針を決めたような発言をした。これに対して、田中氏は「私を口実にして、原発事故を起こした当事者として逃げるのはおかしい。はらわたが煮えくり返る」と激しく反発した。

 田中氏は、これまで「廃炉作業で東電の主体性が見えない」と東電の姿勢を厳しくみている。川村氏の発言は、最終判断を下すべき当事者責任から逃げるような印象を与えたのではないか。

 トリチウム水の処分方法の決定については、風評被害防止を含めて政府も重い責任を負っている。政府は汚染水処理対策委員会に処分方法を検討させているが、政治的決断をいつまでも先延ばしできないと認識してほしい。