きょうのコラム『時鐘』

2017/04/30 01:40

 UターンやIターン。移住(いじゅう)の話題(わだい)が紙面(しめん)に目立(めだ)つようになった。夫婦(ふうふ)で、あるいは若(わか)い女性(じょせい)が単独(たんどく)で。移住のカギは女性が握(にぎ)っているように思(おも)う

東京(とうきょう)の相談窓口(そうだんまどぐち)の職員(しょくいん)が「妻(つま)の実家(じっか)に戻(もど)る傾向(けいこう)がある」と指摘(してき)するのは納得(なっとく)できる話(はなし)だ。男性(だんせい)が年(とし)をとれば頼(たよ)るのは妻である。そして、夫(おっと)よりも長生(ながい)きする妻が頼るのは故郷(こきょう)の実家だ。この心理(しんり)が移住の決(き)め手(て)になるのだろう

「実家に帰(かえ)らせてもらいます」。夫婦(ふうふ)喧嘩(げんか)の決めぜりふである。移住とは関係(かんけい)ないが、女性には度胸(どきょう)があることが分(わ)かる。「女三界(おんなさんがい)に家(いえ)なし」とも言(い)った。女性には安住(あんじゅう)する所(ところ)がないとの仏教的世界観(ぶっきょうてきせかいかん)だが、これも現代的解説(げんだいてきかいせつ)が必要(ひつよう)になる時代(じだい)が来(く)るかもしれない

この連休中(れんきゅうちゅう)に妻の妹(いもうと)夫婦が帰省(きせい)する。数年後(すうねんご)に東京生(う)まれの夫が定年(ていねん)になるので妻の故郷に住(す)みたいという。後押(あとお)しするのは次(つぎ)の二つだ。関東(かんとう)は地震(じしん)が多(おお)いし、新幹線(しんかんせん)ができて行(い)き来(き)も楽(らく)になったし、と

安住の地(ち)を求(もと)めて移動(いどう)を始(はじ)める。都会(とかい)から地方(ちほう)へ。わが家(や)では「帰巣本能(きそうほんのう)かね」と話(はな)しているのだが、母(はは)なる大地(だいち)へ帰れと五月(ごがつ)の風(かぜ)が吹(ふ)く。