きょうのコラム『時鐘』

2017/09/26 01:11

 選挙(せんきょ)に僥倖(ぎょうこう)はない。流(なが)した汗(あせ)の分(ぶん)だけ結果(けっか)が出(で)る―とは田中角栄氏(たなかかくえいし)の言葉(ことば)である。選挙戦(せん)で走(はし)り回(まわ)る時(とき)の昼食(ちゅうしょく)は、塩(しお)の固(かた)まりのような塩ジャケを入(い)れ、ノリで分厚(ぶあつ)く巻(ま)いたにぎり飯(めし)と番茶(ばんちゃ)が定番(ていばん)だった。移動(いどう)の車中(しゃちゅう)で食(た)べられ、時間(じかん)が節約(せつやく)できる

「料理屋(りょうりや)でお膳(ぜん)を並(なら)べて飯を食(く)っている奴(やつ)は必(かなら)ず落(お)ちる」と秘書(ひしょ)だった早坂(はやさか)茂(しげ)三(ぞう)氏が著書(ちょしょ)「オヤジの知恵(ちえ)」で紹介(しょうかい)している。配下(はいか)の新人(しんじん)に出馬(しゅつば)の前(ぜん)提(てい)として「戸別訪問(こべつほうもん)3万(まん)軒(けん)と辻説法(つじぜっぽう)5万回(かい)をやり抜(ぬ)け」と厳命(げんめい)した人(ひと)らしい戦(せん)陣訓(じんくん)だろう

胃袋(いぶくろ)の強(つよ)さも政治家(せいじか)の条件(じょうけん)だ。87歳(さい)の岸信介(きしのぶすけ)氏を訪(たず)ねた早坂氏は、昼食に大(おお)ぶりのローストビーフ2枚(まい)を平(たい)らげた岸氏が「2年前(ねんまえ)にアッチは駄目(だめ)になったが、食べるのが楽(たの)しみなんだよ」と白(しろ)い前歯(まえば)を見(み)せて笑(わら)ったのを見て度肝(どぎも)を抜(ぬ)かれた

今(いま)や両(りょう)氏のような怪物(かいぶつ)政治家は影(かげ)を潜(ひそ)めたが、岸氏の孫(まご)の安倍晋三首相(あべしんぞうしゅしょう)の解散(かいさん)表(ひょう)明(めい)にぶつけるように、小(こ)池(いけ)百合子東京都知事(ゆりことうきょうとちじ)は自(みずか)ら新(しん)党代表(とうだいひょう)に就(つ)くと宣言(せんげん)した

無類(むるい)のラーメン好(ず)きと漏(も)れ聞(き)くが、既存政(きぞんせい)党(とう)の離党(りとう)者を吸(す)い上(あ)げて、新(あら)たな怪物への道(みち)を歩(あゆ)み始(はじ)めるのか。