今日の社説

2020/06/02 00:39

コロナの下水調査 北陸先駆けの手法に期待

 下水に含まれる新型コロナウイルスの量を調べ、それを基に感染状況を把握する疫学調査が富山、石川両県で進められている。日本水環境学会タスクフォースに参加する研究機関に富山県立大や金大の研究者らが加わり、国内24事業体の協力を得て取り組む調査である。他地域に先駆けて検査を伴う本格調査をスタートさせた北陸で、いち早く分析法が確立されることを期待したい。

 新型コロナの感染実態をつかむには、症状の疑いがある人を対象にしているPCR検査では不十分で、国はより簡易に感染歴が分かる抗体検査を1日から東京などで始めた。が、下水から検知する手法を確立できれば、データ収集のために多くの人の手を煩わせることなく、早期に感染拡大や収束の兆候を捉えることができる。調査も随時可能だ。

 新型コロナの治療薬やワクチンの開発にはまだまだ時間がかかるだろう。終息が難しい間はいかに早く感染を確認し、拡大を防ぐかが重要だ。下水を利用する手法は、個人を特定し濃厚接触者を追跡調査していくことは無理だが、流行の前に注意喚起したり、警報を出したりする指標になりうる。

 新型コロナは便や尿から排出され、下水にしばらく残存するとの論文が2月頃から海外で発表され、フランスなど欧米各国が調査に着手し、分析法の開発に取り組んでいる。3月下旬には英国の大学チームが紙製の検出具を考案し、精度の高さや所要時間の短縮、低コスト化が進められている。

 疫学調査では下水からウイルスを検出する手法が以前から用いられてきた。近年では東北大を中心とする共同研究体が下水のノロウイルス濃度を測定し、情報発信するシステムを構築した。下水処理場の計測値が上昇すると、パソコンやスマートフォンで知らせる仕組みで、仙台市が導入している。

 新型コロナの下水調査も研究機関は成果を協力自治体に公開し、感染状況の周知に活用してもらうことにしている。東北大のシステムのように市民が感染情報を早く的確に共有できる態勢が整備できれば、地域ごとの予防対策に役立つものになる。

巨大IT企業課税 公平なルール作り正念場

 巨大IT企業を主な対象とする新たな課税ルール作りが難航している。議論を主導する経済協力開発機構(OECD)の協議は新型コロナウイルス禍の影響もあって停滞している上、トランプ米政権が先進7カ国(G7)首脳会議での協議を見送る方針で、目標としてきた年内の最終合意は困難になっている。

 OECD加盟国を中心とした世界の約140カ国は、巨大IT企業の徴税と配分を公平に行う「デジタル課税」の国際ルール策定で一致している。2012年から積み上げてきた協議が水泡に帰すことがないよう、最終合意へ努力を続けてもらいたい。

 第2次大戦後、自由主義経済の政策協調や国際ルール作りをリードしてきたOECDの真価が試されているともいえる。

 各社の頭文字からGAFAと呼ばれる米グーグル、アップル、アマゾン・コムなど、インターネットで巨利を得ているIT企業に対し、税逃れの批判が世界的に強まっている。サービスを提供し、利益を上げている国(消費国)でほとんど法人税を払っていない▽低税率国を利用した過度な節税策で本来負担すべき税を逃れている、といった批判である。

 多国籍企業に対する現在の国際課税ルールは、工場や支店などの「物理的な拠点」が生みだす利益に課すのが原則となっている。ネット空間で稼ぐ国際IT企業はこのルールから外れた存在であり、拠点がないため自国内の売り上げに課税できない国々が強い不満を抱いて当然であろう。

 製造業を前提にした旧来の課税ルールが時代にそぐわなくなったことは明らかで、日本を含む約140カ国は今年初め、世界規模でサービスを提供する企業から徴収する税を、サービス利用者がいる各国の売上高に応じて配分するという大枠で合意した。

 しかし、税率など詰めの協議は滞っている。GAFAを擁護したい米国は、現行制度と新ルールの選択制を提案し、協議にブレーキを掛けているという。OECDは結束力を失わず、粘り強く一致点を見いだしてもらいたい。