今日の社説

2018/10/18 00:28

新幹線の整備費 JRは受益に応じた負担を

 財務省が整備新幹線の事業費について、最新の状況を反映した費用対効果を分析するようJR各社に求めたのは、膨れ上がる事業費の抑制が狙いだろう。財務省の提言案は、外国人観光客の増加などで北陸新幹線の利用者が大幅に増えていると指摘し、JR側の負担を引き上げるよう要求している。収益の実態に合わせて見積もれば、負担をもっと増やせるはずとの指摘である。

 私たちもこれまでJRに対し、負担の上積みを求めてきた。北陸新幹線は他の線区に比べて収益性が高く、金沢以西でも高い収益性が見込まれる。JR西日本の意向に沿って小浜-京都ルートに決まった敦賀以西のルートについても高収益が予想される。

 JR各社の受益は、新幹線を整備する場合の収益と、新幹線を整備しない場合の収益の差額として算出される。JRが支出する貸付料は、JRの受益に基づいて決まるから、受益が多ければ貸付料の増額が期待できる。貸付料は、新幹線を造る鉄道建設・運輸施設整備支援機構に対してJRが支払う新幹線施設の使用料のことで、整備新幹線の財源になる。

 敦賀開業、さらには早期の大阪延伸がJRの増益に直結するのは確実だろう。JR各社は最新の状況を考慮し、費用対効果を詳細に分析した上で、将来性を加味して負担増に応じてほしい。

 特に敦賀-大阪間の建設費は2兆円を超すとみられる。沿線の理解を得て着工にこぎつけるためには、貸付料の上積みが避けて通れないのではないか。現在は30年となっている貸付料の算定期間の延長も検討を要する課題である。

 金沢-敦賀間の建設費は、人件費と資材価格の上昇や耐震強化の影響で計画より2260億円増える見通しとなった。財務省はJRの負担を増やし、国の負担増を減らしたいと考えているのだろう。

 だが、建設費の上昇はやむを得ない理由であり、国費の増額は避けられない。敦賀以西の建設財源を検討する際は、増えた国費の額を基点にして、もう一段の上積みを図りたい。国費を増やし、大阪延伸を確実に進められるよう、与党は政府に働き掛けてほしい。

免震装置の不正 認定制度含め検証が必要

 油圧機器メーカーKYBと子会社が、免震・制振装置の性能検査データを改ざんしていた。性能が国の認定基準に適合しないにもかかわらず、検査記録をごまかして出荷するという不正は、2003年1月から今年9月まで行われていたとみられる。

 2015年に東洋ゴム工業による免震装置用ゴムのデータ改ざんが発覚し、17年には神戸製鋼所がアルミニウム・銅製品の品質データ不正を公表した。その後も三菱マテリアルや東レなど製造業の品質不正が社会問題となる中、KYBが子会社従業員が告発するまでデータ改ざんを続けてきたのは、驚くべきことである。

 国土交通省はKYBに対し、原因の徹底究明、不適合製品を使用した建築物の構造安全性の確認、適合製品との交換を指示した。所管省庁として当然の措置であるが、KYBの不正を今までつかめなかった国交省自身の対応も検証しなければなるまい。

 国交省は、東洋ゴム工業の不祥事を教訓に、免震装置・材料の品質を保証する国の認定制度を見直し、強化した。従来は、いわば企業性善説に立ち、製造元企業が行った性能検査の結果を国指定の評価機関がチェックする方式であったが、不正防止のため評価機関職員の検査立ち会いや工事施工者による性能確認の仕組みを導入し、監視を強化したのである。

 それにもかかわらずKYBの不正が続いていたのは深刻な事態であり、認定制度の在り方、態勢を再点検する必要もあろう。

 KYBの発表によると、性能検査記録の改ざんがあったのは、地震の揺れを抑えるオイルダンパーという装置で、検査で不適合となると製品の分解、調整に5時間はかかるため、データを書き換える不正が口頭で引き継がれてきたという。1部上場企業とは思えぬ、ずさんな品質管理であり、製造現場だけでなく経営陣の責任も厳しく問われよう。

 免震装置は、建物の耐震性とは直接関係ないため、性能データを多少ごまかしても構わないといった意識が関係業界に根付いていないか気掛かりである。