今日の社説

2019/09/16 01:04

敬老の日に ぬくもりある支援が必要

 長寿社会を象徴するように、全国の100歳以上の高齢者が初めて7万人を突破した。平均寿命も伸び続け、2018年には女性が87・32歳、男性が81・25歳と、ともに過去最高を更新した。ただ、介護を受けたり、寝たきりにならずに生活が送れる「健康寿命」は16年の集計で女性74・79歳、男性72・14歳で、平均寿命との間で10年前後の開きがある。いかに健康寿命と平均寿命の差を縮められるかが、活力ある高齢化社会の課題になっている。

 活動的な生活で心身に刺激を与えれば、要介護状態になるリスクを軽減できるとの研究成果もある中で、地域社会に元気な高齢者を増やすため、北陸でもスポーツや文化活動に積極的に取り組める行政の支援が一段と重要になる。

 先に発表された筑波大の高齢者追跡調査によると、車の運転をやめた高齢者は、閉じこもりがちになることから、運転を続けている人と比べ、要介護リスクが2・2倍になるという結果が出た。痛ましい事故の続発で、高齢者の免許返納が進んでいるが、運転行動により脳が鍛えられる側面もあり、返納後のいわば「脳トレロス」状態の解消も大きな問題だ。

 先の筑波大の調査では、運転をやめても、公共交通機関や自転車を使って、こまめに外出している人は、要介護リスクが軽減するとも指摘している。

 富山、石川の自治体では、免許を返納した高齢者に、バス回数券などを補助するところが増えてきた。地域住民が自分たちで買い物の足を確保しようと乗り合いワゴン車の試験走行を始めるという頼もしい取り組みも出てきた。

 積極的に外出を促す意味では、富山市が2012年度から、孫とともに指定の公共施設に出かければ、入場が無料となる事業を実施し、富山県内市町村に拡大しているだけでなく、金沢市でも7月から2文化施設でスタートした。

 外出することで心身に刺激を与え、孫とのスキンシップで生きがいづくりにもつながる好企画であり、こうした事業をモデルにして増え続ける「人生の長い午後」を充実させる、ぬくもりのある支援を重ねていきたい。

大学入試テスト 民間の英語試験は延期を

 センター試験の後継として、来年度から始まる「大学入学共通テスト」に、民間の英語試験を導入するのは、時期尚早ではないか。実施が目前に迫っているというのに、いまだ全体像が見えず、学校関係者から見直しや延期を求める声が上がっている。

 民間の英語試験のうち、有力と見られていた「TOEIC」は7月に突然、参加を取りやめた。その一方で、英検は今月から予約の受け付けを開始するという。

 受験生は6団体、7種類の試験から選択し、来年4~12月に2度まで受験できる仕組みだが、47都道府県で実施が予定されているのは、GTEC(ジーテック)と英検の二つだけ。日程や会場などは決まってもいない。

 見切り発車のようなやり方で、公平性を担保できるのか。民間の試験に関する情報は、学校側は入手できず、生徒に満足な説明もできない。学校や生徒が不安にかられるのは当然だろう。

 全国高等学校長協会は先ごろ、来年度の実施を延期して制度を見直すよう求める要望書を文科省に提出した。全国の高校へのアンケートで約7割が延期すべきだと答えたとしており、危機感が強くにじんでいる。

 民間による複数の試験を活用し、従来の「読む・聞く」に「話す・書く」を加えた「4技能」を評価するという狙いは理解できる。学校英語を学んでも実際には英語が話せるようにならないという批判があるのも事実である。

 だが、複数の試験の成績を、英語力の国際指標とされる「CEFR(セファール)」に当てはめて、6段階で評価するといわれても、異なる試験の結果をどうやって比較するのか。これまでの勉強法が通用するのか判然としないのでは生徒がかわいそうだ。

 文部科学相に就任した萩生田光一氏は会見で、「現場を良く知っている校長先生たちが大変不安を感じている。そういう声があるのであれば真摯(しんし)に耳を傾けたい。間違っても生徒が実験台になるような制度であってはならない」と述べた。共通テストを英語教育の「実験場」にしてはならない。