今日の社説

2020/02/27 02:16

富山化学の新薬 新型肺炎の治療効果に期待

 富山発の新型インフルエンザ治療薬「アビガン」は、新型コロナウイルス感染症にどの程度有効なのか。国内の2医療機関で、実際に新型肺炎患者に投与する「観察研究」が始まった。

 アビガンは細胞内でウイルスの複製を阻害し、増殖を防ぐ新しいメカニズムの薬剤で、富士フイルム富山化学が富山大学の白木公康教授(当時)の協力を得て開発したファビピラビルという薬剤を成分としている。同社は富山市に生産拠点を置き、国は新型インフルエンザの流行に備えて200万人分のアビガンを備蓄している。

 中国の病院で行われた臨床試験では、ファビピラビルが抗HIV薬よりも優れた抗ウイルス活性を示し、新型コロナウイルスの増殖を阻害する作用が認められた。国内での観察研究で十分な効果が確認できれば、本格的な治療薬やワクチンが開発されるまでのつなぎとして、治療現場に投入する道が開ける。富山で生まれた薬が救世主となることを切に祈りたい。

 アビガンの開発に携わった白木富山大元教授(千里金蘭大教授・副学長)は、メディアの質問に答え、新型コロナウイルスがRNAウイルスの一種である点を指摘した上で、「アビガンは全てのRNAウイルスに効く。日本で重症例が出たら、治療の選択肢になりうる」と語った。

 新型コロナウイルスには特効薬がなく、アビガンなどの抗インフルエンザ薬や抗HIV薬、抗マラリア薬などに期待が集まっている。中国では、米ギリアド・サイエンシズ社が開発した抗ウイルス薬の臨床試験が始まるなど、世界規模で治療薬やワクチンの開発が始まっているが、特効薬と呼べるものができるまで最短でも1年半程度はかかるとの見方もある。

 日本でも感染の防止という初期段階は過ぎ、現在は感染者が急増する可能性が高い「移行期」にステージが移ったとみられる。感染拡大のスピードをいかに制御可能なレベルにまで封じ込められるかが最重要課題であり、アビガンに効果が認められれば局面は大きく好転する。富山県における藩政期以来の創薬の歴史が世界を救うことになるかもしれない。

災害弱者の支援 危険区域の啓発に力を

 内閣府は、災害時に自力避難が困難な災害弱者のうち、河川の氾濫や土砂災害などの危険度が高い区域に住む人をリストアップするよう全国の市区町村に要請する。昨年の豪雨災害で高齢者が自宅で被災するケースが相次いだことから、特にリスクが高い災害弱者の支援強化につなげる。緊急時の救助はもとより、避難行動に関する常日頃からの啓発活動や防災訓練に生かしたい。

 2014年に施行された改正災害対策基本法では、自力避難が困難な高齢者や障害者らを自治体が把握し、名簿を作成することを義務付けており、ほぼ全市区町村で作成が完了している。

 ただ昨年秋の台風19号の際は河川の氾濫により、自ら自宅にとどまったり、体が不自由で自宅から避難できないケースが相次ぎ、浸水や土砂崩れによる倒壊の犠牲者の約半数が70代以上だった。

 福祉関係者などから名簿が「避難に生かせていない」との批判も出ており、今回は名簿の中から危険区域に絞って対象者を抽出し、地域と連携して自宅の被災リスクを伝え、災害時の行動を助言することにした。リストアップは、政府の中央防災会議の報告に盛り込み、梅雨期までの対応を促す。

 北陸では、金沢市のように、新たに作成した水害ハザードマップに基づいて、町会単位で災害図上訓練を実施するところもある。危険箇所を確認し、高齢者などのいる家庭を書き出して、避難時の行動をシミュレーションする。こうした場に危険区域での災害弱者のリストを生かせば、避難経路の確認などの情報共有につながる。

 砺波市では今年度内に、災害発生時にとる行動を市民一人一人がまとめるスケジュール表「マイタイムラインシート」を作成する。他地域でも、とりわけ災害弱者とその人を支援する家族らの意識を高める上で有効な手法だろう。

 災害弱者のリスクに応じた計画を立てた上で、地域の防災訓練に参加すれば、つえや車いすを使って避難先に行く上での問題点や、持ち出す荷物の量なども把握できる。リストアップを、行動を促すきっかけとして生かしたい。