今日の社説

2019/03/22 00:55

重文に「石黒資料」 加賀藩支えた測量家に光

 国の文化審議会は、加賀藩の新田開発などに貢献した江戸時代後期の和算家・測量家の石黒信由(のぶよし)(射水市出身)と子孫3代の功績を伝える関係資料を重要文化財に追加指定するよう、文部科学相に答申した。4代にわたって高い精度の測量を手掛け、加賀百万石を支える土地整備に尽くした石黒家の足跡に光を当て、ふるさとの誇りとして、あらためて広く発信していきたい。

 石黒信由は、最高峰の和算家であると同時に、日本地図を作製した伊能忠敬と並び称される測量家として活躍した。1825(文政8)年に現在の地図と寸分たがわぬ「加越能三州郡分略絵図」を完成させたほか、加賀藩の新田開発や村の境界紛争解決などに貢献し、河川、用水修築にもかかわるなど多方面で業績を残している。

 関係資料は1984年に2051点が重文指定され、98年に1714点が追加指定となった。今回の答申により、2代信易(のぶやす)、3代信之、4代信基が行った測量日記や道具、地図類など2630点が新たに追加される見通しである。

 4代にわたる資料からは、新川群の新開地測量、河北潟の測量、さらには敦賀から琵琶湖への運河整備の測量など、加賀藩の領内外で石黒家が携わったスケールの大きな業績の全容が分かる。

 精緻な地図の数々は、農業政策の変遷や幕末期の海岸線の防衛など、加賀藩の藩運営の実像を垣間見せてくれる貴重な品々ばかりであり、藩政の最前線の現場に超一流の技術者を抱えていた雄藩の底力を示していると言えよう。

 指定されるほとんどの関係資料は、石黒家の資料の保存活用を推進する一般財団法人「高樹会」から寄託を受けて射水市新湊博物館が保管しており、常設展示されているものもある。今回の答申を経て、質、量ともに一段と重文指定の厚みが増すことになるだけに、一般の人が幅広い業績に触れる展示も順次企画していきたい。

 とりわけ射水市をはじめ県内の児童生徒に、資料をふるさと教育の素材として活用しながら、地元に偉大な先達がいたことを知ってもらう取り組みを継続的に打ち出していきたい。

福井県境の国道8号 4車線化の着手は適切

 国道8号の石川と福井の県境部を4車線化する事業が始まる。国土交通省が加賀市と、あわら市の間の約9キロを4車線にする案を示した。急勾配の区間ではトンネルを新設する。新年度から事業に着手するという。

 石川、福井県境部の国道8号は片側1車線の区間が長く続き、昨年は大雪で約1500台の車が動けなくなった。降雪期に安全で円滑な通行を確保するためには道路の改良が欠かせない状況になっている。国が4車線化とトンネル新設の必要性を認めて着手するのは心強く、完成を急いでほしい。

 昨年の深刻な立ち往生を受けて、国交省と石川、福井両県は県境部の国道8号に投入する除雪車の増強や関係機関の連携強化に取り組んだ。国交省は人工知能(AI)を活用して車の流れを監視するシステムも導入している。

 除雪体制の拡充は効果を期待できる。ただし、抜本的な対策を講じるためには4車線化を避けて通ることができない。現場は勾配が急で、道幅も狭いため、短時間に大量の雪が降ると除雪が追い付かなくなる恐れがあるからだ。

 昨年2月の大雪時は、立ち往生の解消に向かった車両が現場到着に時間を要したことも渋滞が長引く要因になった。石川、福井の県境部では以前も大雪で立ち往生が発生している。再発防止に向けて4車線化に踏み切る国交省の判断は適切と言える。

 県境をまたぐ区間では急勾配が続くため、現道の車線を増やすのではなく、西側に2・5キロのトンネルを上下線別に設ける対応も妥当である。県境部では土砂災害の危険もあることを考えてもトンネルの新設は歓迎できる。

 国道8号には北陸自動車道の代替路の役割もある。太平洋側の大災害時に東西の物流を維持するためには、日本海側で道路の機能を高めておかなければならない。福井県内の原発で事故が発生したときの避難路を確保する上でも国道8号の整備は重要になる。

 国交省は4車線化の事業費を490億円と見込んでいる。費用はかかるが、必要性を考えると投資の意義は大きい。