今日の社説

2020/10/22 01:02

妊婦さん11%減 V字回復へ対策の総点検を

 予想されていたとはいえ、現実に数字を見せつけられると、暗澹(あんたん)たる思いにさせられる。新型コロナウイルスの影響で、出産を回避する動きが全国的に広がり、5~7月に妊娠した女性が前年同期比で11・4%も減ってしまった。

 昨年、日本で生まれた赤ちゃんの数(出生数)は、統計開始以来最少の86万5239人だった。1割超の減少がこのまま続けば、来年の出生率は70万人台まで下落しかねない。

 石川県では、減少率が全国平均を上回る12・3%減となり、富山県は全国平均と同率の11・4%減だった。政府が5月に策定した新たな「少子化社会対策大綱」が指摘した通り、新型コロナは、安心して子どもを産み育てられる環境整備の重要性をあらためて浮き彫りにしたといえよう。

 それでも新型コロナの流行が最悪期を脱したとすれば、産み控えの反動は必ず起きるはずだ。V字回復を期待し、少子化対策の不備を点検し直す必要がある。

 少子化対策に特効薬はなく、出産や子育て全般に付きまとう、さまざまな不安や悩みを一つ一つ点検し、手を打っていくしかない。菅政権が打ち出した不妊治療の費用負担軽減は、有効な具体策の一つだろう。

 ベネッセコーポレーションの調査では、コロナ感染に不安を抱えている妊婦は9割超に上る。具体的には「育児を学ぶ『両親学級』などの中止で情報不足」が61・0%と最多で、「入院中の面会ができなくなった」が55・1%、「立ち会い出産の中止」が51・8%だった。

 コロナ禍特有の課題について、政府は早急に医療機関と協議し、不安解消の手助けをしてほしい。都会から地方への「里帰り出産」を歓迎しない風潮を払拭していく必要もある。

 最も懸念されるのは、若い世代の収入が減り、子どもを持つ余裕がない世帯が増えていることだ。新型コロナによる社会経済活動の縮小が、産み控えに拍車を掛けているのは間違いない。遠回りなようでも、景気を回復させることが、最大の少子化対策であることを理解しておきたい。

菅首相初外遊 東南ア重視の姿勢鮮明に

 菅義偉首相はベトナム、インドネシア両国を訪問した初の外遊で、未知数の外交手腕に対する不安を取り除き、東南アジア諸国連合(ASEAN)を重視する姿勢を鮮明にした。

 「自由で開かれたインド太平洋」構想の実現に向け、自身が外交の先頭に立ってASEANとの連携を緊密にするという首相の意向表明は、米国、中国など関係国それぞれに意味のあるメッセージとなった。

 南シナ海の現状について、名指しを避けながらも「法の支配に逆行する動きが起きている」と中国の覇権行動に懸念を示す一方、日米豪印によるインド太平洋構想は北大西洋条約機構(NATO)のような軍事同盟を目指すものではないと述べ、警戒心を強める中国に配慮した。中国は、日米豪印による安全保障の連携強化を「インド太平洋版のNATOを構築する企て」と批判している。

 菅首相が意欲を見せた首脳外交を効果的に展開するには、首脳同士の信頼醸成が欠かせない。インドネシアのジョコ大統領との会談は、その点でも意義があった。

 2014年に発足したジョコ政権は、インフラ整備への投資を期待して中国との関係を重視し、巨大経済圏構想「一帯一路」の協定に調印している。ジャワ島の高速鉄道事業では、日本の受注が確実視されていたが、土壇場で事業費の負担のない中国提案に乗り、日本側に不信感を抱かせた。今回の首脳会談は、日本側関係者に残るわだかまりを払しょくし、信頼関係の再構築につながろう。

 ジョコ政権側も日本との関係強化の必要に迫られている。南シナ海で中国と領有権を争っているわけではないが、中国側はインドネシアの排他的経済水域(EEZ)の一部を自国の海と主張し、中国漁船の違法操業が絶えない。

 このため、インドネシア政府は中国が主張する境界線「九段線」を否定する書簡を国連に送り、南シナ海で軍事演習を行っている。日本とインドネシアの関係強化とASEANの結束強化を図ることは、互いに中国の圧力を跳ね返していく上でも重要である。