今日の社説

2020/01/20 01:01

倒産11年ぶり増加 中小の厳しい実態浮き彫り

 東京商工リサーチの調査では、昨年の企業倒産件数(負債額1千万円以上)がリーマン・ショックのあった2008年以来、11年ぶりに前年を上回った。富山、石川を含め24都府県で増加し、全体の約9割を従業員10人未満の企業が占めた。

 慢性的な人手不足に、10月の消費税増税による個人消費の低迷が重なった。加えて各地で相次いだ自然災害も要因に挙げられている。企業規模が小さいほど景気のマイナス要因は大きく響く。経営体力の乏しい小規模・零細企業がこの三重苦に耐えられず、行き詰まった実態があらためて浮かび上がった。中小企業が多い北陸にとっても同様の厳しい状況にあり、心配が募る。

 気がかりなのは年間約8000件が倒産するうち今回、人手不足関連が426件となり、調査を始めた13年以来最も多かったことである。4月からは、昨年施行された働き方改革関連法により大企業で先行した「残業の上限規制」が中小企業にも適用される。時間外労働は原則月45時間とし、それを超えた場合に罰則も科せられる。年次有給休暇の取得義務化に続き、中小企業はさらなる効率的で生産性を高める経営に迫られる。

 働き方改革の対応には大企業でも苦慮しており、困惑している中小企業経営者も多いのでないか。実際、一昨年、石川県中小企業団体中央会による調査では働き方改革について経営に「悪い影響」とした回答は62・7%で、「影響ない」23・5%を大きく上回った。中でも残業の上限規制による対応力低下を指摘する経営者が目立った。

 各都道府県には働き方改革推進支援センターが設けられ、専門家が出張相談にも応じている。業務を効率化するAI(人工知能)など最新技術の活用も推奨されているが、人材難を抱える企業には一筋縄ではいかないだろう。

 昨年末発表された11月の有効求人倍率は富山が全国トップの2・08倍(就業地別)、石川は1・89倍で依然として高い。だが、内実は製造業を中心に求人を控える動きが出始め、景気の先行きに対する警戒が怠れない状況にある。労務管理の対応は急いでおきたい。

ジビエ料理応援 安全周知し風評被害一掃

 野生イノシシへの豚コレラ(CSF)感染の影響で、獣肉処理施設や関連業者が苦境に陥る中、県内で飲食店などの協力によりジビエ料理のフェアが始まった。こうした機会を活用してジビエの魅力を発信するとともに、万一、感染したイノシシを食べても人体に害はないことを周知し、風評被害の懸念を払しょくしたい。

 県のジビエフェアは、県内のイタリア料理店や居酒屋など計20店舗で始まり、来月23日までの開催期間中、各店でジビエ料理を味わえる。抽選でカレーセットなどが当たる特典も設け、安心安全のPRに力を入れる。

 近年の県内のイノシシ捕獲は、年間4千頭を超えて推移しているが、食肉利用は全体の数%程度にとどまる。逆に言えば、イノシシ肉の有効活用の可能性を広げる分野と言える。処理技術の向上や多様な加工品開発で、新たな食文化として認知度が高まってきただけに、豚コレラによる風評被害の拡大は何としても防ぎたい。

 県内の豚コレラ感染イノシシは既に30頭を超え、広い範囲で確認されている。国は、イノシシの発見場所から半径10キロ圏内で捕獲されたイノシシの加工処理をしないよう各施設に求めているが、感染が見つかったエリアにある施設では、捕獲したイノシシを焼却処分にしたり、今季の流通を断念するところもある。

 農林水産省は10キロ圏内でも、検査で陰性が確認された場合は加工できるように、規制緩和も検討するようだが、できるだけ早急に打開策を提示してほしい。

 今冬のように暖冬傾向が続くのも気がかりだ。一般に積雪30センチ以上の日が70日以上続くことがイノシシが越冬できるかどうかの目安だが、昨年末には入善町の住宅街でイノシシが住民を襲い、3人が重軽傷を負う人身被害があったように、冬場をしのいで個体数が増えれば、人里やまちなかに出てくる可能性が高まる。

 安定した消費の確保は、肉の有効活用による増え過ぎ抑制につながる。ジビエフェアなどの場を通して安心安全を訴えていきたい。