今日の社説

2019/10/17 00:12

試される北陸の底力 人の動き停滞させぬ対策を

 台風被害による車両の浸水で、北陸新幹線の完全復旧が見通せない中、北陸へ人を呼び込む取り組みに不安が広がっている。観光地では、かき入れ時の11月を前にホテルや旅館のキャンセルが相次いでおり、ビジネスや会合で首都圏との間を行き来する上でも、遠回りによる時間的負担はマイナスイメージにつながる。「新幹線ロス」の中で、人の動きを滞らせないように、新たな誘客企画の発信や交通アクセスの拡充策を打ち出せるのか、あらためて北陸の底力が問われる。

 今秋は北陸で大型のイベントやツアーが相次いでいる。先に富山市で開催された日本青年会議所の全国大会は、台風による交通機関の乱れで、参加者が予定の半数の6千人にとどまった。ラグビーW杯に合わせて19日以降に石川入りする豪州・ニュージーランドのツアー客や、27日開催の富山、金沢両マラソンのエントリー選手の交通手段の確保も気がかりだ。

 開業4年半で利用者が累計4千万人を超えた北陸新幹線の運行制限が続くことで、持続してきた人の動きの勢いがそがれれば、北陸の活力低下に直結する。行政としては、北陸新幹線に代わる交通網を多様な情報手段を通じて周知し、関係業者に運行本数や使用機材の拡充をなお一層求めたい。

 また、こんな時こそ、今ある魅力を見つめ直し、効果的に発信していく知恵が求められる。それが復旧後のさらなる飛躍にもつながる。

 たとえば金沢文化スポーツコミッションは来月、金沢市で開かれる西日本レディース卓球フェスタに合わせて、選手の延泊を促す特別企画を初めて行う。日程の前後に、夜の金沢21世紀美術館を楽しむツアーや紅葉が盛りの兼六園の茶店で味わう夕食プランを提案した。こうした厚みのある企画を各種大会やイベントに合わせて用意することも大切だ。

 富山市などで始まった「世界で最も美しい湾クラブ」総会は、国内外の参加者に、北陸の湾岸の魅力をアピールし、新たなリゾートのあり方を提案する舞台として生かせる。一時的な試練にもへこたれない北陸の奥行きのある魅力を発信していきたい。

外資規制の強化 重くなる安全保障の観点

 政府は、安全保障で重要な日本企業の技術を守るため、外資の出資規制を強化する方針を決め、今国会で外為法の改正を目指している。欧米各国は、自国企業の重要技術が特に中国に流出するのを防ぐため、国外からの直接投資を規制する動きを強めている。日本も経済政策で、これまで以上に安全保障の観点を重視せざるを得ないだろう。

 外為法は、安全保障や国家主権に関わる国内企業への出資を規制している。武器製造や原子力、航空機産業などが主な対象で、現行法は、外国の企業や投資家が国内上場企業の株式を「10%以上」取得する場合、事前の届け出を義務づけている。

 改正法案では、届け出の基準となる株式保有割合を「1%以上」に引き下げるほか、海外投資家の意向を受けた役員の派遣や、重要事業の売却など、経営に影響力を行使する場合も、事前の届け出を義務化する。外資の投資活動に対する監視の網を広げて、重要技術の保全を図る狙いである。

 ただ、国外からの投資は経済の成長に欠かせず、過度な規制で海外投資家の投資意欲をそぐことがあってはならない。このため、安全保障上の問題がない投資は、事前の届け出や審査を免除し、手続きを簡略化する方針という。

 欧米の動きを見ると、中国と技術覇権争いを繰り広げる米国は、国防権限法などで中国製通信機器の締め出しを図る一方、先端技術の輸出管理や投資規制を強化している。欧州連合(EU)は、域外資本が欧州企業を買収する場合、EU加盟国と欧州委員会が意見や情報を交換して審査する新たな仕組みを導入した。自由主義経済の下でも安全保障を重視する欧米の動きの根底には、「国防は経済に優先する」という伝統的な考え方があるとされる。

 外資の株式保有の届け出基準を一気に1%以下とする案には、投資関係者らから異論も出ている。国の安全保障を損なわずに、活発な投資を呼び込むには、バランスの取れた外為法の運用が求められており、審査の免除対象の選定などが今後の課題となる。