今日の社説

2019/01/21 00:45

移住推進へ国が支援 他県に後れを取らないよう

 東京一極集中を是正し、地方への移住を推進するため、国が最大300万円の支援金を支給する新たな補助事業が創設された。若年層の人口流出と地元企業の人手不足が深刻化する地方の自治体にとっては、移住を促す呼び水になることが期待される。富山、石川県も他県に後れを取ることがないよう、積極的に活用していきたい。

 新たな事業は、東京23区在住者か通勤者を対象とし、地方に移住して自治体が仲介した中小企業に就職した場合、最大100万円の支援金を支給する。さらに、地域の問題解決につながる事業を起業した場合は、支給額が最大300万円となる。いずれも国が2分の1を補助し、県と移住先の市町村がそれぞれ4分の1を負担する仕組みである。

 富山、石川県では近年、北陸新幹線の開業も追い風にして、首都圏を中心に移住者が増えている。2017年度は富山が前年度比164人増の729人、石川が131人増の1020人で、ともに過去最多の水準となっているが、地域の活力を維持していくためには一層の取り組みが求められる。

 こうした中、国が財政面で移住を後押しするのは歓迎できる。支援金の支給がただちに移住者の増加に結びつくとは限らないが、移住の動機づけになることは間違いないだろう。富山、石川県も市町村と連携し、支援金制度を最大限に活用した移住者の掘り起こしに努めてほしい。

 国の事業創設を受けて、富山県は移住希望者と県内企業とのマッチングを支援する求人情報サイトを4月上旬にも運用する方針を示し、市町村長にも協力を求めた。国の要件を満たすよう既存の「とやまUターンガイド」のサイトを改修する予定で、新年度早々の事業開始に意欲を見せている。石川県も対応を急ぐ必要がある。

 移住者を呼び込むためには、働き口の確保と同時に、子育てや教育、住環境の一層の充実を図らなければならないのは言うまでもない。全国の地方自治体が移住者確保にしのぎを削る中、豊かな自然や文化を含めて、この地の魅力を従来に増して広くアピールしていく努力を求めたい。

「野生絶滅」見直し トキが舞う里山へ着実に

 絶滅の恐れのある野生生物を分類した環境省のレッドリストで「野生絶滅」に指定されている特別天然記念物トキが、絶滅の危険性が1ランク低い「絶滅危惧ⅠA類」に見直される見通しになった。野生復帰が順調に進んでいることから、同省が検討しており、今年の変更を目指している。実現すれば21年ぶりの見直しで、官民によるトキ復活の取り組みの中で意義ある節目となる。

 本州最後のトキの生息地だった石川県では、いしかわ動物園(能美市)が2010年から分散飼育に取り組み、トキの野生復帰で大きな役割を担っている。新潟県佐渡市で放鳥されたトキは富山や石川にもたびたび飛来しており、県民らのトキへの関心も高まってきた。分類の見直しを契機にして、トキが舞う里山里海づくりに向けて着実に取り組んでいきたい。

 日本産のトキは03年に絶滅したが、中国産による人工繁殖に成功し、08年に初めて放鳥された。今は佐渡市などに約370羽が生息しており、野生絶滅の条件は満たさなくなるとして、分類の変更が検討されている。保護増殖事業の成果だが、過去の教訓を忘れずに、自然の中で安定して繁殖できるように、今後も生息状況などをしっかり把握していく必要がある。

 トキの復活には、生息環境の整備も欠かせない。生き物にやさしい環境は、人間にもやさしいといえるが、かつてトキがいた里山は高齢化や過疎化が進んでいる。トキがすみやすい環境づくりと地域振興へ、能登とともに世界農業遺産に認定された佐渡は、環境保全型農業の推進に取り組んでいる。

 石川県は11年に策定した県の「生物多様性戦略ビジョン」で、「トキが羽ばたく石川の実現」を目標に掲げ、トキは里山里海のシンボルになっている。能登でも各種の活性化策に取り組んでおり、トキと共生する里山再生につなげてほしい。

 富山県では、これまでに黒部、富山市などでトキの飛来が確認されている。住民が「トキの里」づくりを進めるなど、トキへの愛着を深めており、多くの生物を育むふるさとの自然を見つめ直したい。