今日の社説

2019/06/27 02:27

群馬で浅野資料展 功績伝える機会増やしたい

 氷見市出身の実業家浅野総一郎の功績を伝える展示会が8月、浅野が発電所や工場建設で地域振興に尽力した群馬県渋川市で開かれ、氷見市の関係者が保管する資料が貸し出される。

 こうした資料は、昨年、氷見市の顕彰団体「九転十起(きゅうてんじゅっき)交流会」が管理していた市内の資料展示施設が閉館後、一般公開の場がなくなっていた。国内のみならず世界的な広がりを持つ企業人の功績の一端に触れる機会が、ゆかりの地で設けられるのは喜ばしい。

 それと同時に、貴重な資料が偉人の故郷で人目に触れない状態で所蔵される状況は、今後、浅野を通した交流の輪を広げる上でもマイナスだろう。展示公開の拠点の整備が望まれる。

 渋川市は市ゆかりの偉人の業績に光を当てる顕彰展を開催している。同市には浅野の妻サクの名を冠した東京電力佐久発電所や日本カーリットの工場がある。近年、同市では九転十起交流会の尽力で浅野の銅像が建立され、「寒ブリ交流会」を開催するなど氷見市との交流も進めてきた。

 ただ渋川市所蔵の浅野の関連資料が少ないため、8月に開かれる資料展に向けて、同交流会元理事長の山崎健さん(氷見市薮田)が協力することになった。直筆の書4点をはじめ、生家や着物姿の浅野の写真なども検討する。

 浅野の資料は昨年11月に氷見市の展示施設「帰望郷館」が閉館してからは、山崎さんら有志が個人で保管している。まだ落ち着き先は決まっていないが、ゆかりの地への貸与は今後も続けたい。

 市民有志でつくった九転十起交流会は会員の高齢化で今年4月に解散したが、山崎さんらは新たに浅野ゆかりの地を結ぶ「全国浅野総一郎友の会」としての活動を始めるなど、より大きな輪の中で浅野交流の深化に乗り出している。

 渋川市はじめ関係地域にも参加を呼び掛けていく考えであり、こうした動きと連動する形で、生誕地に関連資料の管理や常設展示するスペースを設けることが、浅野に対する市民の関心を高める上でも望ましい。地元官民が協力し、九転十起交流会の遺産を未来に向けて生かしてほしい。

通常国会閉幕 乏しかった新時代の議論

 第198通常国会が幕を閉じ、参院選に事実上突入した。1月28日に召集された今国会は、平成から令和へと時代をつなぐ意味で歴史的な国会であった。国際政治も、米国と中国の覇権争いに象徴される歴史的な転換期にあり、新たな時代の国のありようを問う骨太の議論が国会に期待された。しかし、与野党とも選挙戦への政治的思惑にとらわれ、国の針路や制度に関する建設的な議論に乏しい国会であったと言わざるを得ない。

 今国会では、政府が新規に提出した57法案のうち、54法案が成立した。参院選を控えて提出法案を絞った影響もあるが、成立率は94・7%となり、昨年の通常国会の92・3%を上回った。

 幼児教育・保育を無償化する改正子ども・子育て支援法など政府が重要法案と位置づける各法案が成立したことは、政府にとって評価できる成果であろうが、省庁の不手際も目についた。

 厚生労働省が毎月勤労統計調査を不正な方法で行い、雇用保険などが過少支給になった人が大量に出たことは重大なミスであり、安倍晋三首相は施政方針演説で謝罪を余儀なくされた。が、統計の誤りを「アベノミクス偽装」などと批判した野党側の追及の仕方にも疑問が残った。問題の本質からそれた政権批判で、制度の改善につながる議論とは言えない。

 深みのある論戦より、与党議員の失言と閣僚辞任が印象に残る国会であったのも残念である。道路整備をめぐる「忖度発言」を含めて、長期政権の緩みやおごりの表れと批判されても仕方のないお粗末な言動であるが、こうした問題に多くの時間を費やした与野党の攻防も感心しない。

 今国会のより大きな問題点は、衆参両院の憲法審査会が開店休業状態に陥り、憲法論議がまったく進まなかったことである。主権者の国民に対して、無責任な対応と言わなければならない。さらに、1年ぶりに開かれた党首討論も、国の針路や基本問題について意見を戦わす本来の姿からほど遠く、討論の在り方を見直す必要があることが改めて示された。