今日の社説

2020/02/29 00:43

臨時休校の波紋 全国一律の必要性あるか

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍晋三首相が全国の小中高校を週明けから春休みまで臨時休校にするよう要請し、学校現場や保護者の間に混乱が広がっている。市民生活にどのような影響が及ぶのか、どの程度効果があるのかが判然としない上に、準備期間がほとんどないためである。

 要請を受け、富山県は3月2日からの休校を決めたが、富山市や金沢市は2日からの実施を見送るなど、自治体によって対応がばらついたのも無理はない。山野之義金沢市長は会見で、「首相の危機感は共有する」としながらも「現時点で2日からの休校は考えていない。経済活動に対しても影響が大きすぎる」と指摘した。

 安倍首相の要請は、唐突感が否めない。入試や卒業式を控え、学校現場が頭を抱えるのは当然だ。多くの保護者、特に共働き世帯は留守中の不安が尽きないだろう。

 首相は国会で、「休校によって生じるさまざまな課題については、責任を持って対応していく」と述べた。富山県のほか、茨城県つくば市や千葉市は、保護者が対応できない場合、学校で自習させることを決めており、こうした柔軟な措置も必要ではないか。

 新型肺炎に関しては、安倍首相の存在感が薄く、対応が後手に回っているとの批判があった。首相が異例の要請に踏み切ったのは、指導力を発揮する必要性に迫られた事情もあるのだろう。

 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議でも小中高の一斉休校が検討されたことはなく、全国一律に行う医学的根拠は乏しいといわざるを得ない。

 ただ、感染が広がる北海道や千葉県では既に休校の措置が取られている。今のところ、子どもの感染者が少なく、重症者はいないとはいうものの、学校をクラスター(感染した人の集団)化させないという判断が間違っているとも言い切れない。

 安倍首相は先に、多くの人が集まるイベントや公演を今後2週間自粛するよう求めたが、一斉休校との相乗効果で、ここ1、2週間が正念場とされる新型肺炎の拡大阻止が目に見えるかたちで現れてくることを祈りたい。

棚田の古民家で農泊 氷見の絶景活用の一手に

 氷見市長坂の棚田集落で、古民家を活用した「農泊」観光事業が動き出す。棚田維持のため20年にわたってオーナー制度を継続してきた地域だけに、遠来の人を迎え入れる環境は整っている。海越しの立山連峰が見える絶景と、多彩な海山の幸を持つ強みを生かし、素朴で人情味あふれる氷見のもてなしで遠来客を迎え入れたい。

 氷見市と全国50カ所以上で古民家再生事業を手掛ける兵庫県の企業「NOTE(ノオト)」が昨年6月、歴史資源を活用した地域活性化に向けて連携協定を結び、市内で農泊の適地を探していた。

 今回は、対象集落内にある古民家2棟を宿泊施設に、公共施設を管理施設に、それぞれ改修して受け入れる。氷見市では、管理施設の改修を支援し、運営面では地域おこし協力隊員を配置するなど人的後押しも行う。新年度に宿泊事業を運営する法人を住民参画で設立し、2021年度の開業を目指している。

 対象エリアは、1999年から県内初の棚田オーナー制度に取り組んでいるが、住民の高齢化と人口減少で、約20年間で世帯数が半分近くになるなど、農業の継続が課題になっている。

 ただ、一帯は「日本棚田百選」の一つに数えられ、海沿いとは趣を変え、棚田から富山湾越しに立山連峰を仰ぐこともできる希少性の高い眺望が魅力となっていることから、観光資源としての産業化を模索していた。

 今回の農泊の事業化によって、地元でノウハウがある棚田オーナー制と組み合わせた運営ができれば、移住とまではいかなくとも、年間を通して継続的に長坂地区とかかわる「関係人口」の構築にもつながるだろう。

 農泊については、能登の農家民宿が国内外から評判が良く、能登町の「春蘭(しゅんらん)の里」を中心に、現在では民宿が奥能登4市町に広がり年間1万人を超える修学旅行生や外国人観光客を受け入れている。氷見の農泊は、まだ動き出したばかりだが、NOTEの全国ネットワークを生かしながら、古民家ファンに魅力を発信したい。