今日の社説

2020/08/12 00:50

熱中症で犠牲者 コロナ下の体力減に用心

 富山、石川両県で8月に入り、熱中症による犠牲者が相次いだ。10日の小松市、6日の射水、七尾各市の計3人ともに80代で、自宅の庭や畑で倒れているのを発見された。10日は富山、小松各市で38度を超すなど今後も危険な暑さになる日が増えそうだ。特に高齢者にとっては重症化しやすい新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されている。熱中症と合わせてリスク回避に気を抜かず、この厳しい夏を乗り切りたい。

 コロナ対策で常態化するマスク生活が熱中症のリスクを高めるため注意を要する。着用していると口腔内に熱がこもりやすく、喉の渇きにも気づきにくい。人との距離を確保できる場所では適宜にマスクを外すようにしたい。

 熱中症に詳しい医師によると、コロナ下で外出や運動の機会が格段に減り、思いのほか体力が衰えていることに自覚のない人が多いという。厳しい暑さの中で普段通りに庭仕事や農作業をすること自体が危険で、慎重な行動が欠かせない。高齢者は夜、トイレに行くのを嫌い、水分摂取を控えたり、体が冷えるのを避けてエアコンを使わなかったりする傾向があり、これらも熱中症を誘発する。

 厄介なのは熱中症とコロナ感染症の初期症状が似ていることだ。発熱や頭痛、けん怠感、吐き気、筋肉痛など共通する点が多く、日本救急医学会なども臨床症状から鑑別しにくいと指摘し、対応が遅れないよう注意を促している。自分で判断せず、診断を受けることが肝要だが、類似の体調不良を覚え、応急処置が必要な時は早く涼しい場所に移り、体を冷やして水分を補給したい。熱中症は放置すると、その日のうちに死にいたる場合がある。水分補給で症状が回復すれば、脱水症を起こしていた可能性があり、コロナ感染の疑いも小さいといえる。

 今年は長雨の影響で北陸の梅雨明けは平年より9日遅かった。7月の日照時間も富山は観測史上最短で、金沢は平年の半分以下だった。その分、体が熱さに次第に慣れていく「暑熱順化」も遅れがちになっているという。熱中症になりやすい条件が幾つもそろう今夏は例年以上に予防の意識を高める必要がある。

技術の流出防止 大学の管理体制強化を

 軍事転用可能な先端技術の海外流出を防ぐ取り組みが大学でも強化されている。文部科学省によると、全国立大86校が輸出管理の専門部署を設置し、関連規定を策定するに至った。

 兵器開発などをめぐる安全保障環境は厳しさを増している。現在の米中対立は、いわゆる機微技術の覇権争いともいえ、技術の窃取を含む開発競争が激化している。先端技術の保護と経済安全保障は国家的な課題であり、大学も例外ではない。

 経済産業省と文科省は、武器や軍事転用可能な技術・物資に関する貿易管理の手引きを10年以上も前に策定し、体制の整備を大学や研究機関に促してきた。全国立大でようやく専門部署は整えられたが、理系分野を持つ公私立大は取り組みが遅れている。

 留学生を多く受け入れ、外国企業との共同研究に取り組む各大学は、外為法に基づく輸出管理に精通した人材を育て、技術流出を防ぎながら研究・開発を推進できる体制をめざしてほしい。

 経産省によると、民生用の革新的技術が軍事分野に応用されるケースが増えている。軍民両用の高度技術の輸出は政府の許可が必要で、それらの研究・開発に携わる留学生や海外研究者を大学が受け入れる場合は、出身組織や研究目的など事前の審査(入口管理)を行うことになっている。

 大学の研究現場では、外国企業との共同研究が増えている。理系大学院に進む日本人学生は先細りの状況で、研究が留学生に支えらている面もあるという。東大の留学生は今年5月時点で、大学院も含めて4千人を超え、うち約6割は中国籍で占められる。

 こうした状況から、管理強化で研究が低下する懸念も指摘されている。だからといって、留学生の受け入れ審査などを緩くすることはできない。経産省によると、中国人留学生が外為法で規制される航空機搭載用赤外線カメラなどを無許可で中国に輸出し、摘発された例がある。

 輸出管理の専門部署を設置した各大学は、組織をしっかり機能させる必要がある。