今日の社説

2019/09/19 00:43

海保巡視船を威嚇 政府は日本海に危機感を

 北朝鮮が日本海で日本の巡視船を排除したと発表した。北朝鮮側は巡視船が北朝鮮の経済水域に入ったため、自衛的措置によって追放したとしている。

 しかし、海上保安庁によると、巡視船が北朝鮮籍とみられる船を確認した現場は日本の排他的経済水域(EEZ)内である。自衛的措置を取ったという北朝鮮の主張は認められない。

 北朝鮮外務省報道官の発表は、海保の巡視船に北朝鮮籍とみられる高速艇が接近し、小銃で威嚇した事案を指しているとみられる。報道官は「自国水域から日本の船舶を追い出したのは正々堂々とした主権行使だ」と述べたという。

 これらの主張は海保が確認した事実と照らし合わせると、決して受け入れられない。

 海保によると、巡視船は8月23日に能登半島沖の日本側EEZ内で、高速艇と北朝鮮の国旗が描かれた貨物船を確認した。24日には高速艇が巡視船に接近し、乗組員の1人が小銃を向け、別の1人はビデオ撮影をしていた。

 北朝鮮が日本のEEZ内で巡視船を威嚇した行為を「自衛的措置」「主権行使」と発表した狙いは何か。北朝鮮外務省報道官が「わが国の漁船の漁労活動に対する妨害行為が再発しないよう、日本側に厳重に注意喚起した」とまで言うのは、違法操業を堂々と続けるという意思表示なのだろうか。

 北朝鮮船は日本海でロシアのEEZにも侵入している。ロシアは17日、北朝鮮の漁船2隻が密漁したとして拿捕(だほ)したと発表した。北朝鮮船の乗組員は武器で抵抗したという。ロシアは、その数日前にも北朝鮮の小型漁船16隻を拿捕している。

 イカが日本側に動いてくれば、北朝鮮船も追ってくる可能性がある。日本海の安全と権益が脅かされる事態は看過できない。政府は北朝鮮の動向を分析し、違法操業対策を強化する必要がある。

 能登半島沖の大和堆(やまとたい)周辺では中国籍とみられる船も押し寄せている。日韓暫定水域では韓国漁船とのトラブルが発生した。厳しい北東アジア情勢を反映したようなせめぎ合いが北陸の沖で繰り広げられる現状は深刻である。政府は危機感を強めなければならない。

台湾の孤立化 崩される太平洋の友好国

 中国の影響力拡大と台湾の孤立化が太平洋の島国で進行している。台湾と外交関係を結んでいたソロモン諸島が先ごろ中国と国交を開き、台湾と断交した。太平洋での軍事的優位を保つため、台湾を支援する米国や、太平洋島しょ国との連携に力を入れる日豪両国などにとって座視できない事態である。

 中国の習近平国家主席は、台湾独立志向の民主進歩党を率いる蔡英文氏が台湾総統に就任した2016年以降、圧倒的な経済力で親台湾国を取り込み、台湾を孤立化させる戦略を推進している。蔡政権がこれまで外交関係を維持してきた17カ国のうち6カ国はオセアニア(大洋州)の国々であり、インフラ整備や医療支援などでつなぎとめに努力してきた。

 しかし、中国の巨額援助と現地の中国人社会の拡大により、その一角がついに切り崩されてしまった。ソロモン諸島の野党は、近隣国のトンガが重い対中債務に苦しめられている現状を例示して慎重な判断を求めたが、4月に選出されたソガバレ首相は、中国との国交樹立に踏み切った。

 日本は太平洋・島サミットを3年ごとに開き、太平洋島しょ国の港湾整備や防災対策、人材育成などを支援している。オセアニアの盟主ともいえるオーストラリアやニュージーランドも援助を増やしているが、中国の影響力は拡大の一途をたどっている。

 太平洋諸国の断交が続く心配のある台湾の蔡政権にとって、心強いのはトランプ米政権が、中国の反対にかかわらず、軍事面の台湾支援を強めていることである。今年6月に発表したインド太平洋戦略の報告書で、台湾を「パートナー」と位置づけ、F16戦闘機や戦車、携帯型地対空ミサイルの売却を決めた。台湾への戦闘機売却は1992年以来である。

 不安材料の一つは、親台湾派の有力者であるボルトン氏が大統領補佐官を解任されたことである。米議会も台湾を重視しており、台湾政策の基本は変わらないとみられるが、トランプ大統領が中国との貿易協議で台湾を取引材料にする懸念が拭えない。