きょうのコラム『時鐘』

2020/06/02 00:35

 気分一新(きぶんいっしん)を促(うなが)す衣(ころも)替(が)えに合(あ)わせて、街(まち)に人(ひと)が戻(もど)ってきた。あいにく、夏(なつ)に似合(にあ)わぬマスク姿(すがた)は変(か)わらぬが

「新(あら)たな日常(にちじょう)」の始(はじ)まりでもあるという。意(い)味(み)も中身(なかみ)もよく分(わ)からないが、要(よう)は「3密(みつ)」回避(かいひ)の大原則(だいげんそく)を守(まも)って「隔(へだ)たり」をとれ、ということか。掛(か)け声(ごえ)とともに、透明(とうめい)なアクリル板(ばん)やビニールのカーテンのたぐいが増殖(ぞうしょく)してきた

手袋(てぶくろ)をした店(てん)員(いん)を介(かい)して買(か)い物(もの)をする。食(た)べ物(もの)を扱(あつか)う店(みせ)では、コロナ禍以前(かいぜん)から手袋着用(てぶくろちゃくよう)の調理(ちょうり)が目(め)立(だ)つ。人(ひと)には好(この)みがあり、性癖(せいへき)もある。手袋を好(この)ましく思(おも)う人がいて当然(とうぜん)だろうが、わが身(み)は、どうにもなじめないでいる

初(はじ)めて見(み)たのが、回(まわ)る寿司店(すしてん)だったのが不(ふ)運(うん)だったか。素手(すで)で握(にぎ)るのが寿司、というアタマがあるから、目(め)の前(まえ)に出現(しゅつげん)した手袋を介した握りには、たまげた。清潔(せいけつ)ムード演出(えんしゅつ)に感心(かんしん)するより先(さき)に、「その手袋は汚(よご)れてないのか」と失礼(しつれい)な心(しん)配(ぱい)までした。プロの料(りょう)理(り)人(にん)の素手に勝(まさ)る清潔で頼(たの)もしいものはない。そう確信(かくしん)する「旧人(きゅうじん)類(るい)」もいる

身軽(みがる)になる衣替えも、透明な板やカーテンに覆(おお)われる窮(きゅう)屈(くつ)さ。これも一興(いっきょう)か。大概(たいがい)のことには、もう驚(おどろ)かない。