きょうのコラム『時鐘』

2019/03/22 00:52

 訳(わけ)あって、長年付(ながねんつ)き合(あ)いのあったアルコールを「しばし控(ひか)えよ」と諭(さと)される身(み)になった。途端(とたん)に左党(さとう)から甘(あま)党(とう)に急旋回(きゅうせんかい)。口卑(くちいや)しいことである

ずっと素(す)通(どお)りしていた菓子(かし)の売(う)り場(ば)で足(あし)が止(と)まることが増(ふ)えた。名酒(めいしゅ)の味(あじ)比(くら)べに劣(おと)らず、季節(きせつ)の菓子の食(た)べ比べも楽(たの)しい。この世界(せかい)も季節の先取(さきど)りが進(すす)むようで、花便(はなだよ)りに先(さき)駆(が)けて、いまは「桜餅(さくらもち)」が花盛(はなざか)り

個人的(こじんてき)な体験(たいけん)だが、甘党のムシが妙(みょう)に騒(さわ)ぐ時(とき)がある。晴(は)れ上(あ)がった日。やたら気分爽(きぶんそう)快(かい)な日。やる気満々(きまんまん)を自(じ)覚(かく)する日。そんな日は、カレーライスも恋(こい)しくなる。酒にヤケ酒はあるが、菓子やカレーに、「やけ食(ぐ)い」なし。甘党になって知(し)った大発見(だいはっけん)である

もっとも、例外(れいがい)はある。雨(あめ)が降(ふ)ろうが不機嫌(ふきげん)だろうが、彼岸(ひがん)のぼた餅は、食べないわけにはいかない。先祖(せんぞ)の供(く)養(よう)という口実(こうじつ)で、子供(こども)が好(す)きそうな甘さにひととき酔(よ)う春(はる)の楽しみである

「満開(まんかい)」の桜餅の隣(となり)に、草餅(くさもち)を見(み)つけた。郷愁(きょうしゅう)の母(はは)の餅は、わが家(や)からもとっくに消(き)え、絶滅(ぜつめつ)を危惧(きぐ)していたのだが、うれしいことに、深(ふか)いヨモギ色(いろ)との対面(たいめん)もかなった。「おらが世(よ)やそこらの草も餅になる一茶(いっさ)」