瑞龍寺の奉納刀「景平」の鞘を眺める澤田会長=南砺市内

瑞龍寺の奉納刀、鞘を確認 利常作らせた「景平」

2020/05/12 02:03

 加賀藩3代藩主前田利常が作らせた国宝瑞龍寺(高岡市)の奉納刀の一つ「景(かげ)平(ひら)」の鞘(さや)を富山刀剣研究会の澤田康則会長(52)=南砺市=が11日までに入手した。鞘は明治末期に奉納刀が瑞龍寺から東京の前田家に返納する過程で、富山県内各地に流出したとみられる。鞘は丁寧な技法で漆が塗られ、石川県立歴史博物館(金沢市)は「加賀藩の鞘師の技術がうかがえる貴重な史料」としている。

 

 瑞龍寺の奉納刀は1654(承応3)年、利常が5代藩主綱紀の武運長久を願って領内の刀工22人に作らせた。このうち、「景平」は藩の刀工の第一人者である加州住兼若(かしゅうじゅうかねわか)の長男の景平が制作し、5番目に位が高いとされる。

 

 景平の鞘は長さ約1・1メートル、ホウノキ製で、全体に漆を塗っている。奉納年月の「承応三年八月廿日」、作者名の「加州住藤原景平」の文言が彫られ、鞘の中に入っている木型は「景平」と墨で書かれ、刃先が途中で切れている。

 

 澤田会長によると、漆は通常、刃がさびやすくなるため塗らず、見栄えをよくするために施したとされる。作者名と奉納年月を彫るのも一般的な鞘にはない特徴という。

 

 澤田会長は4月に富山市内の古美術商が廃業するにあたり、倉庫を整理していたところ、景平を見つけ、購入した。富山、石川県内の寺や神社には、他にも奉納刀や鞘が残っているとみられる。澤田会長は「展示品として人々の目に触れ、加賀藩の業績や文化に興味を持ってほしい」と話した。

 

 石川県立歴史博物館の北春千代学芸主幹(73)は作った年代がはっきりしており、丁寧な技法が見受けられるとし、「若くして藩主に就いた孫綱紀を思う利常の心遣いが伝わる」と述べた。

 

 奉納刀の鞘は加賀藩の鞘師が作った。明治末期に奉納刀のみが前田家に渡り、ほとんどの鞘は所在が分からなくなった。現在、ほかに確認できるのは瑞龍寺にある6点のみとされる。